「地域に支えられ、成長を重ねる」――鳥栖工業ラグビー部、創部80周年へ

創部からまもなく80年を迎える鳥栖工業ラグビー部。
長い伝統を受け継ぎつつ、部員1人1人が成長を目指して練習に励んでいる。
地域やOBの温かな支えを力に変え、仲間との絆を深めながら歩んできた。
その声と汗に込められた情熱は、これからどのような未来を切り開いていくのだろうか。今回かちスポでは、チームの指揮をとる徳永元紀監督に話を伺った。
コロナ禍後の厳しさと新入部員の壁
「一番厳しかったのはコロナが終わってからです。小中学校で部活動ができなかった子たちが上がってきて、体力がない状態から始めるんですよ。そこにいきなり格闘技のようなラグビーですからね。今年の新入部員は1人だけ。僕は機械科の教員なので生徒を誘いますが、やっぱり『怖い』と言われるんです。でも“怖くないように練習すれば怖くなくなる”と伝えています。そこを噛み砕けるかどうかが次への鍵なんです。」
OB・保護者に支えられる強固なネットワーク
取材前の調査でも見つかったクラウドファンディングや地域の支援。その背景を尋ねると、監督はこう答えた。
「卒業後も保護者やOBが応援してくれるんです。ゼロから始めた子どもたちが3年間で大きく成長する。その姿を見たからこそ“応援したい”と続けて関わってくださるんです。」
鳥栖工業ラグビー部で得られるもの
「ゼロから始めるので、下手になることはありません。勉強と一緒で足し算のように少しずつ積み重ねていく。3年生になってやっと試合で戦えるようになり、ラグビーの面白さが分かってくるんです。体づくりも欠かせません。プロテインには頼らず、筋トレと食事で基礎を作る方針です。」
さらに監督は勉強面にも力を入れる。
「試験前は必ず休みにします。また、資格取得にも力を入れており国家資格や技能士3級など最低1つは取得させています。就職も大手企業が多いですね。ラグビーでの経験が人間性や将来の力につながると考えています。」
チームの現在とキャプテン像
現在は2年生を中心としたチーム。体格の大きい選手を起点に展開し、トライを狙うスタイルを模索中だ。
「キャプテンの戸髙は真面目でやるべきことをきっちりやる選手。ただチーム全体を統率する力はまだ伸びしろがある。そこが成長すれば、もっと変わると思います。」
期待を寄せられる戸髙選手(上写真)
鳥栖工業らしいラグビーとは
「全国トップクラスの佐賀工業に勝つことは難しい。でも“ワントライ取ろう”“3点取ろう”という目標を立て、ゼロで終わらないことを大事にしています。ラグビーは笛が鳴るまで諦めてはいけない。最後までやり抜く姿勢、それが鳥栖工業のラグビースタイルです。」
創部80周年へ向けて
「あと2年で創部80周年です。そこまでは何としても部を続けなければなりません。そのためにも部員勧誘やチームの存続に力を入れる必要があります。」
取材を終えて、ラグビーを通じて選手の成長を支え、地域とつながり続ける鳥栖工業ラグビー部の姿勢に強い価値を感じた。創部80周年を迎えるその先に、どのような未来を描いていくのだろうか。
株式会社WIDE - 永石恒陽